PONAM-31 Z Grade
PROJECT STORY MODELLISTA(モデリスタ)との コラボレーションで実現した PONAM-31の「進化」「深化」に迫る

PONAM-31 Z Gradeはコロナ禍で変化した人々の生活様式やニーズに対応するため、2022年に新たに誕生した新グレードで、モデリスタとコラボレーションしたことによるデザイン面での「進化」はもちろん、船内での機能性や居住性についても「深化」させている。この船のコンセプトである「Luxury Party Style & Workcation Utility」に、モデリスタのデザインフィロソフィーである「Resonating Emotion ~響感の創造~」を融合させ、贅沢で優雅な佇まいを演出するデザインにまとめ上げた。今回はトヨタ自動車マリン事業室とトヨタカスタマイジング&ディベロップメント(以下TCD)の企画・開発担当者にインタビューし、開発経緯からデザインに込められた想いまで話を聞いた。

※当インタビューは、トヨタ自動車発行のOcean Style Vol.14に掲載された内容を一部再編集したものです。
掲載の情報は2023年3月10日現在の情報です。

  • トヨタ自動車株式会社 マリン事業室 企画・開発グループ長
    TOMOHIRO TAKAI 高井 智祐
  • トヨタ自動車株式会社 クルマ開発センター カラーマネジメント室 主査
    KATSUJI KANEMARU 金丸 克司
  • 株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント 営業企画本部 用品・ハートフル事業部 部長
    KATSUTOSHI OZAKI 尾崎 勝敏
  • 株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント 開発本部 内外装技術部 デザイン室 スタイルクリエイトグループ 主任
    SYUNTA KUZE 久世 峻大
MODELLISTA(モデリスタ)との
コラボレーションで
実現した
PONAM-31の「進化」「深化」に迫る

はじめに、PONAM-31 Z Gradeを
開発することになった
きっかけを教えて下さい。

高井「コロナ禍で人々の生活様式に変化があり、お客様が求めている空間や装備が変わるなかで、我々の商品についても進化させていく必要があると思い、Z Gradeの企画を始めました。これまで以上にボートでもトヨタらしさを表現するには意匠(デザイン)でも新しい風を取り入れる必要があると感じ、モデリスタさんに企画・コンセプトに共感いただき、今回のコラボレーションが実現しました。」

モデリスタとして、Z Gradeのデザインワークを
担当する話があった時はどのように思いましたか?

久世「モデリスタはこれまでクルマの外観を中心にカスタマイズのデザインを行ってきましたが、今回はボートの使用シーンを想定してデザインするということで、新しいチャレンジができると思いました。また、最近ではクルマを取り巻くライフスタイルも含めた商品提案をしていきたく、まさにブランド変革期だったので、今回のコラボレーションにはぜひチャレンジしたいと思いました。」

デザインワークを進めるにあたり、
最初に取り組んだことは何でしょうか?

久世「まずはトヨタマリンさんからお伺いしていた主要コンセプトを明確に理解・合意しようとしました。その中ではデザイン画のスケッチを使い、視覚的にも狙いと呼応するかを確認しながら議論を進めました。最終的に、コンセプトとして「Luxury party style」と「Workcation Utility」の2つに纏まりました。新鮮な風をデザインにも吹き込みたいとの思いから、トヨタマリンさんからはあえて制約条件をつけずに自由にデザインワークを進められました。その甲斐あって、贅沢で優雅な佇まいを持つ斬新なデザインに纏められたと思います。」

ボートのデザインは自動車のデザイン手法とは
全く別でしょうか?
実際にボートのデザインを
行うなかで、どんなことに苦労されましたか?

久世「今回は室内空間を全域でデザインさせていただいたこともあり、クルマのエアロパーツとはデザイン手法が大きく異なりました。まずはトレンド調査も兼ねて世界中の高級ヨットから外観の世界観や内装の色合いなどを研究しました。苦労した点は限られたスペースの中で、空間をより広く見せるために試行錯誤したことです。また、ボートのパッケージデザインは、その下に収められているエンジンや部品の機能を損なわないスペース制約を守る必要があり、デザインコンセプトに沿ったレイアウトを形成していくことにも苦労しました。」

トヨタマリンとして、デザイン開発をモデリスタと
コラボレーションすることで、
どんなことを期待していましたか?

高井「デザインや素材を通じて、お客様にクルマと共通する「空気感」を感じていただき、我々が目指すFun to driveに繋がる体験価値を提供したいと思いました。」

金丸「モデリスタさんとコラボレーションすることで、新しい風を吹き込みたいと思っていました。どうしても同じブランドのボートをデザインしていると、デザイン技術やアイコンが固まってきてしまうと同時に、それらを壊すことが難しくなってきます。今回外部のアイディアを取り入れたことで、普段自分たちが考えないようなデザイン案が出てきたので、ぜひやりたいなと思いました。一番印象深かったのは「Luxury party style」のコンセプトに合う夜のシーンです。国内ではフィッシャータイプも多く、デザインコンセプトも爽やかな日中のイメージが多いため、とても新鮮でした。こうしたアイデアは普段のデザインにも積極的に活かしていきたいと思いました。」

今回のプロジェクトで
最もこだわった部分を教えて下さい。

久世「リアガーニッシュをはじめ、コンソール周りなど、モデリスタのエッセンスが表現されたシルキーゴールドの加飾部分があり、クルマでも活用しています金属感のプレミアムな雰囲気をボートの世界でも表現した部分はぜひご覧いただきたいです。」

高井「機能性や居住性の面では、デッキやサロンでの回遊性と居心地の良さに特に拘りました。限られたスペースのなかで、キャビンからアフトデッキにかけてはストライプの床材を連続的に採用したことで、これまで以上に空間としての繋がりを高めました。また、実際に船上パーティーを楽しんでいる方々へのヒアリングで、スタンディングパッドの重要性に着目し、新たに採用しています。他にも、サロンソファの中抜き構造やアフトデッキラウンジクッションを設置することで、より機能性についても深化させています。」

金丸「イラスト段階で表現された質感や色合いは、現実のモノになったとき必ずしも第三者と一致するとは限らないので、イラストで表現された世界観に限りなく近づけるよう、船体に採用しているカラーはもちろん、ソファなどの素材や質感にも相当拘っています。ハルカラーにダークグレーとライトグレーを採用したのは、シルキーゴールドを入れた時にホワイトでは表現できない、程良いコントラストを実現する狙いです。ゴールドの色合いについては新型クラウンの内装にもアクセントとしてゴールドが採用されていたので、これをヒントにZ Gradeに最適なゴールドが表現できるよう、相当な議論と検証を重ねてこの色を選んでいます。」

Z Gradeにはモデリスタのエッセンスを表現したシルキーゴールドの加飾パーツを採用し、
プレミアムな雰囲気をボートの世界でも表現している。

プロジェクト開始から実際にデザインが
完成するまで、
期間はどのくらいでしたか?

高井「2021年1月に開発の骨子を検討し、3月にはコンセプトを言語化・イラスト化したものを纏めました。その後、会話を密にブラッシュアップを進めていき、5月に大きな方向性を確定し、デザインレビューを実施しておりましたので、実質約5ヶ月間でデザインは完成しています。ちなみに初号艇は翌2022年10月には横浜ボートフェア2022でお披露目しており、非常にスピード感を持ってプロジェクトに臨むことができました。」

金丸「モデリスタさんにクルマのドレスアップパーツ開発やデザインで培ったベースの上に、更に進化させるノウハウがあったというのも短期間でデザインを完成できた要因だと思います。」

久世「実は事前にベンチマークしていた情報を纏めて、キックオフの打合せ時に写真を皆さんに見ていただき、デザインコンセプトに関するベクトルを合わせられたことで、スムーズにデザイン作業に入ることができました。」

今回のコラボレーションで、
大切にしていたことはありますか?

金丸「お客様は商品をご購入いただく際に単純にモノを買うだけでなく、商品の持つ世界観や体験価値も同時に買われていると思います。だからこそ、私たちの仕事は単純にカッコいいだけではなく、本当に今回のコンセプトに合わせた空間かどうかをしっかりと意識しながらデザインを進めました。例えば、夜のシーンでしっかりと寛げるか、パーティーシーンでは本当にここにいたいと思えるか、五感を使ってお客様に提供したい体験価値を具現化することに注力しました。このように、「機能的価値」だけでなく、言葉や機能で表せない「情緒的価値」も大切にして、この船の世界観や体験価値もお客様に楽しんでいただきたいと思っています。」

尾崎「モデリスタには『あなたの「もっと」に応えたい Something Extra』というブランドのコンセプトがあり、その考えを大切に、常に一歩先をゆく提案ができるよう心掛けました。モデリスタとしては今後もより一層、幅広いステージにおいて、お客様の求めるライフスタイルに合わせたデザインを具現化していきたいと思っています。」

今回 Z Gradeのデザインワークを担当したことで、
周囲の反応はどのような感じですか?

尾崎「今日、私が身につけている時計はセイコーさんとのコラボレーション企画でモデリスタもデザインに参加させていただいたものですが、今回トヨタマリンさんともコラボレーションさせていただいたことで、こうした企業間の協業にも社内から注目が集まっています。」

今後もお互いに舟艇のデザイン開発などの
シーンで
コラボレーションしていく
可能性はありますでしょうか?

尾崎「私たちとしては第2弾、第3弾があれば、ぜひチャレンジさせていただきたいと思っています。ボートとクルマのカスタマイズはどちらもターゲットユーザーが似ている部分があると思います。今後もご協力できればと思っています。」

高井「トヨタマリンとしても、今回はデザインワーク全般でのコラボレーションでしたが、お客様のご意見をお伺いしながら、エアロパーツやカスタマイズパーツでの検討も可能性があるのではないかと考えております。TCDさんは空力設計にも強みを持っていらっしゃるので、今後も機能と意匠の二律双生で、お互い力を合わせて良いモノづくりができればと思います。」

文中敬称略

※当インタビューは、トヨタ自動車発行のOcean Style Vol.14に掲載された内容を一部再編集したものです。掲載の情報は2023年3月10日現在の情報です。

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