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SEIKO SELECTION MODELLISTA Special Edition
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SPECIAL TALK SESSION いままでにない腕時計を プロダクトするには異業種のデザイナーの フィロソフィーが必要だった

腕時計業界でのカスタマイズは時計のバンドやベゼルの変更などが一般的。それに対してモデリスタのカスタマイズは、トヨタ車本来のデザインをスポイルすることなく共鳴させ感情を高ぶらせたプロダクトを創出する。モデリスタのフィロソフィーであるResonating(共鳴)や Emotion(感情の高ぶり)をセイコーの腕時計にどう落とし込んでいったのか?

  • 株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント 開発本部 内外装技術部 デザイン室
    CHIKARA KOCHO 古長 力
  • セイコーウオッチ株式会社 デザイン部
    AKIHIRO HASEGAWA 長谷川 明弘
  • セイコーウオッチ株式会社 商品企画二部
    HIROKI OYA 大宅 宏季

異色のコラボレーションをスタートさせた
モデリスタとセイコー。
後編では、どのようにデザインを作り込んでいったのか、
またデザインに秘めた思いについて語ってもらった。

コラボによって時計のカスタマイズの
概念を根底から覆したデザインに

司会:異業種デザイナーによるコラボの話を最初に聞いたときはどのように思いましたか?

長谷川氏:最終的にどういう時計のデザインになるのかはまったく想像できませんでした。どちらのデザイナーがどのくらいデザインに関わるのかというところは詰めていく必要がありましたね。

大宅氏:そうですね。そもそも異業種のデザイナーがコラボすること自体が異例のことでした。

司会:最初にデザインを提案したのはどちらなのでしょうか?

大宅氏:最初はこちらが提案しました。ダイヤルにメタルのギラッとしたエアロパーツ風の物を乗せていたのですが、最終的なデザインとはまったく違っていました。

古長氏:モデリスタに寄せたデザインにしたのですね。他のカスタムメーカーよりもメッキを多用しているからギラツキがあり派手な印象を与えていたのかもしれません。

長谷川氏:はい。クロームやギラっとしたものはカスタムのイメージがありました。ホイールや車のパーツをモチーフにするのではなく、モデリスタさんのフィロソフィーをくみ取ったデザインに最終的にはすることができたと思います。

古長氏:特徴的な針やインデックスを新規で作成したことが、モデリスタのフィロソフィーであるResonating(共鳴)や Emotion(感情の高ぶり)に繋がるのかなと思いますが、長谷川さんはどう感じましたか?

長谷川氏:Resonating(共鳴)はあまり聞き慣れないので最初はピンときませんでした(笑)。ただウェブサイトで初めてエアロパーツをまとった車を見たとき前進していくような躍動感がありました。そのあと街なかでモデリスタさんの車が走っていたのを見たのですが、止まっているときよりもEmotion(感情の高ぶり)を感じますね。

古長氏:ありがとうございます。自動車メーカーだけでなくパーツメーカーもフィロソフィーを掲げていくことが大事だと思っています。

大宅氏:そうかもしれません。ベースのモデルをカスタマイズする場合に「ほんとうはもっとここをこうすればカッコイイけれど、コテコテになるから止めておく」というのは腕時計にも自動車にもありますよね。

長谷川氏:時計業界でカスタマイズと言うと、時計のバンドを付け替えたり、ベゼルを替えたりすることが定番なのですが、今回のコラボでは付け替えではなく、時計の中にモデリスタさんの要素を織り込んでいったのは初めての経験でした。

古長氏:やろうとしていることは同じでしたね。自動車に後付けで装着するのではなく、自動車そのものを昇華させていくことが時計でも実現できたと思います。

大宅氏:腕時計のカスタマイズでは通常はインデックスにルミブライト(高輝度蓄光塗料)を塗装するのですが、ダイヤルに印刷することにより継ぎ目で時間を読めるというのは、とても珍しかったです。

長谷川氏:ダイヤルにルミブライトを印刷することは、長年内に秘めていたアイディアだったので、今回実現できたのはデザイナー同士のコラボならではだったと思います。

司会:コラボで難しかったことはありましたか?

古長氏:長谷川さんに「時計は自動車とは違い、なんでもできるわけじゃないんです。こういうのは普通はやりません」って言われました。でも私たちは普通はやらないことが好きなんですよ(笑)

長谷川氏:時計のカスタマイズで物理的にできることは古長さんもわかっていらっしゃるので、具体的なスケッチを作っていただき、それをアレンジすれば実現可能な範囲でした。

古長氏:スケッチのやり取りを何度もしましたね。お互いのエッセンスを否定するのではなく磨きあう感じです。自動車ですとLEDを使いたくさん光らせるように、ルミブライトやインデックスはたっぷり光らせました。一点豪華主義ではなく、モデリスタのブランドカラーである緑も使っています。

司会:腕時計とエアロパーツをデザインするときのポイントを教えてください。

長谷川氏:セイコーには昔からのデザインパターンがあって、そこからどれだけ変えていけるのかというのはよく議論しています。腕時計は手首に付けるためサイズもある程度決まっているので、その限られたサイズの範囲でどうデザイン性を出していくかを工夫しています。

古長氏:自動車の外装は複雑な曲線が組み合わさっているため、陽の光に当てたときの見え方も考えてデザインします。自動車と違い時計は全貌が一度に見えるため、繊細な部分を作り込まないといけないし、デザインできるところが限られてくるという難しさがあるのでしょうね。

司会:最初に一歩踏み出したいと言っていましたが、踏み出せましたか?

大宅氏:はい。腕時計の普及価格帯でここまで感性的なデザインにこだわった商品は珍しいと思います。

パーツメーカーもフィロソフィーを
掲げることが大事な時代に

司会:いま世界的に大きな変革が訪れていますが、この時計を通じてどう世界に伝えたいですか?

古長氏:自分が好きなデザインの物を所有するというのは心が豊かになりますよね。心が豊かになると余裕も生まれハッピーになる。車のカスタマイズは自己満足かもしれませんが、モデリスタに乗っていただいて良かったなと思っていただけるのが理想です。コラボウオッチはモデリスタファンのみならず多くの方に身につけて幸せな気持ちになってほしいですね。

大宅氏:SDGsの観点からですと、「つくる責任、つかう責任」という考え方があります。昔は大量消費社会で時計にもコモディティ化が進み、なんでもいいという時代もありました。でもいまは価格帯に限らず、絶対にこれじゃないと欲しくないという時代にチェンジしています。機能はもちろんのこと、フィロソフィーがないと買ってもらえません。今回の2人のデザイナーによるコラボ商品のような既存にないデザイン重視の製品が広がれば、所有欲を満たすだけでなく製品に対しての思い入れも強くなり、結果、物を大切に使っていただけるのではないかと思います。

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